STREAM CARE
沢は買えます。
水は買えません。
土地の所有権を取れば、その沢は「自分の敷地内の沢」になります。 けれど水そのものは、上流のどこかから来て、あなたの敷地を通り過ぎ、下流の誰かのところへ行きます。 あなたが預かっているのは、水が通る数十メートルの区間だけです。
だから、ここに書くことは環境保護の呼びかけではありません。 上流の人にしてほしくないことを、自分が下流の人にしないという、それだけの話です。
WATERSHED
沢は、思っているより長くつながっています
敷地を流れる幅1mの沢は、下って本流に入り、いずれ一級河川になります。 国土交通省『河川データブック2025』によると、日本の法定河川は35,526本・総延長144,068.7km。 その先端の無数の毛細血管が、名前のない沢です。
下流には、たいてい誰かがいます。 農業用水として取水している集落、簡易水道の取水口、ワサビ田、養魚場、内水面漁協の管理する釣り場。 旧河川法(明治29年)施行前からの慣行水利権は、全国の一級・二級河川で約12万件あるとされます (総務省2001年勧告が引用する数値)。上流で何かが起きれば、その人たちに届きます。
距離の感覚として、洗剤や油は数キロ流れても薄まりきりません。 「山奥だから誰もいない」は、たいていの場合そうではありません。
DON'T
沢に入れてはいけないもの
理由まで書きます。理由が分かっていないと、状況が変わったときに判断できません。
洗剤・シャンプー・歯みがき
「生分解性」と書かれていても、分解には時間と酸素が必要です。分解の途中で酸素が使われ、 水生生物が呼吸できなくなります。少量でも、沢のような流量の小さい流れでは濃度が下がりません。
こうする洗い場は沢から10m以上離し、地面に浸透させます。 食器は先に紙や布で拭き取れば、洗剤の量が大きく減ります。米のとぎ汁も流さないでください。
油——とくにチェーンソーのオイルと混合ガソリン
見落としやすい最大の汚染源です。チェーンソーは動かしている間、チェーンオイルを飛散させ続けます。 1日使えば数百mlが周囲に散ります。沢のそばで伐るなら、そのまま水に入ります。 鉱物油は水面に膜を作り、酸素の供給を止めます。
こうする沢の近くで使うときは植物性のチェーンオイルに替えてください。
価格は鉱物油の2〜3倍ですが、1本で数日使えます。給油と混合ガソリンの取り扱いは沢から離れた平場で、
受け皿を敷いて行ってください。
当社のレンタルでは、沢の近くでの作業とお聞きした場合、植物性オイルを入れてお渡ししています。
し尿・生活排水
沢の水を飲用にしている人が下流にいる可能性があります。 大腸菌は数キロ流れても検出されます。あなたが下流で同じことをされたら困るはずです。
こうする建物を建てるなら合併処理浄化槽。 それ以前の段階では、携帯トイレかコンポストトイレを使い、持ち帰るか適切に処理します。 穴を掘って埋める方法は、沢から30m以上離し、増水時に水が来ない高さで、という条件付きです。
焚き火の灰・炭・燃え残り
灰はアルカリ性で、水のpHを変えます。炭は分解しないので、そのまま残ります。 「自然のものだから」ではありません。
こうする完全に消火して冷ました灰は持ち帰るか、 沢から離れた場所に少量ずつ土に混ぜます。炭は持ち帰ってください。 焚き火台を使い、直火は避けたほうが後片付けが楽です。
生ゴミ・残飯・野菜くず
分解する過程で酸素を消費します。加えて、動物を呼びます。 一度餌場と認識されると、ツキノワグマやイノシシが来るようになり、 あなただけでなく近隣の人の危険になります。
こうする持ち帰ってください。埋めても掘り返されます。
外来種——意図せず持ち込むほうが多い
アメリカザリガニやウシガエルを放すのは論外ですが、実際に多いのは 長靴や道具の泥に付いた種子や卵です。ほかの水域で使った道具をそのまま持ち込むと、 オオカナダモやコカナダモが定着することがあります。
こうする別の場所で沢に入った長靴やタモは、乾かしてから持ち込みます。 特定外来生物を放つことは外来生物法で禁じられており、罰則があります。
濁水——造成のときに一番出ます
意図的な汚染ではないのに、影響がもっとも大きいのがこれです。 重機で土を動かすと、雨の日に土砂が沢へ流れ込みます。 細かい泥は川底の石の隙間を埋め、魚の産卵床と水生昆虫の住み場所を潰します。 一度埋まると、次の大水まで戻りません。
こうする沢と作業場所の間に、土のうか植生の帯を残します。 雨が降りそうな日は土を裸のまま放置しません。造成が終わったら、早く緑を戻します。
THINK TWICE
やる前に考えたほうがいいこと
禁止ではありませんが、取り返しがつきにくいものです。
沢をコンクリートで固める
崩れが心配で護岸したくなりますが、三面をコンクリートにすると生き物の行き来が切れ、 水温が上がり、水が地面に染み込まなくなります。そして河川区域内では許可が必要です。 まず市町村の河川担当課に相談してください。石を積む、木を使うなど、 隙間の残る方法のほうが結果的に長持ちすることもあります。
沢沿いの木を切る
見通しを良くしたくて切りたくなりますが、水際の林(渓畔林)は日陰を作って水温を保ち、 根で岸を留め、落ち葉が水生昆虫の餌になります。切ると水温が上がり、岸が崩れやすくなります。 切るなら数本ずつ、様子を見ながら。保安林に指定されていれば許可が必要です。
流れを変える・堰を作る
水を寄せたくて流路を掘り替えると、増水時に思わぬ方向へ水が走ります。 自分の敷地だけでなく、隣地や下流に影響します。堰の設置は工作物にあたり、 河川区域内なら許可が必要です。小さく始めて、大雨を何回か越してから判断してください。
魚を放す
善意で放流したくなりますが、多くの川は内水面漁協が管理し、放流の計画があります。 そこに別の魚が入ると遺伝的な影響が出ます。釣りにも遊漁券が必要な川があります。 放流も採捕も、まず地元の漁協に確認してください。
INDICATORS
水の状態は、そこにいる生き物が教えてくれます
環境省と国土交通省の「全国水生生物調査」では、川底の石をめくって出てくる生き物の種類で水質を判定します。 検査キットも道具も要りません。買う前の下見でも使えます。
石をめくったら元に戻してください。生き物の住み場所です。
なお、「きれいな水」の生き物がいても、そのまま飲めるという意味ではありません。
飲用を考える場合は水質検査が必要です。
RULES
関わってくる法律
| 河川法 | 河川区域内での工作物の設置、掘削、盛土、取水に許可が必要です。沢の多くは河川法の適用外の「普通河川」ですが、その場合も市町村の条例で許可が必要なことが多くあります。 |
|---|---|
| 廃棄物処理法 | ゴミや廃材の投棄は不法投棄にあたります。自分の土地であっても違法です。罰則は重く、5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金(法人は3億円以下)と定められています。 |
| 外来生物法 | 特定外来生物を放つ、飼う、運ぶことが規制されています。罰則があります。 |
| 森林法 | 保安林での伐採・土地の形質変更には都道府県知事の許可が必要です。火入れには市町村長の許可が必要です。 |
| 漁業法・内水面漁業調整規則 | 漁業権が設定された川では、採捕に遊漁券が必要な場合があります。放流にも制限があります。 |
| 水質汚濁防止法 | 主に事業場を対象とした法律ですが、事業として施設を運営する場合は関わってきます。 |
法令の運用は自治体により異なります。実際の判断は、市町村の河川担当課・林務担当課、 都道府県の森林担当課、地元の漁協へご確認ください。
CHECKLIST
現地に行く前に、これだけ
- 洗い場は沢から10m以上離す。食器は拭き取ってから洗う
- 沢の近くでチェーンソーを使うなら、植物性オイルに替える
- 給油と混合ガソリンの扱いは、沢から離れた場所で受け皿を敷いて
- トイレは携帯トイレかコンポスト。埋めるなら沢から30m以上離す
- 灰と炭は持ち帰る
- 生ゴミは必ず持ち帰る。埋めても掘り返される
- 他の水辺で使った長靴・道具は乾かしてから持ち込む
- 土を動かしたら、雨の前に裸地を放置しない
- 石をめくったら元に戻す
- 工作物、伐採、取水、放流。迷ったら市町村に電話する
OUR POSITION
私たちの立場を、正直に書きます
沢バンクは、沢のある土地を紹介するサイトです。 土地が動くことで成り立つ事業をしています。 つまり私たちは、この話について中立ではありません。 「沢を守ろう」と言う立場としては、いちばん疑われるべき側にいます。
それでもこのページを置いているのは、 紹介した土地の沢が汚れていったら、この事業そのものに意味がなくなるからです。 沢のある土地の価値は、水がきれいであることそのものです。守ることと商売が、ここでは一致しています。
私たちがやること
- 物件ページに、沢の情報とあわせて確認すべきことを必ず書く。都合の悪い情報も削らない
- レンタルでチェーンソーをお貸しするとき、沢の近くでの作業とお聞きしたら植物性オイルを入れる
- 自分たちの土地(モデル沢地)で、ここに書いたことを実際にやる。できていないことは、できていないと言う
- 「沢の水が自由に使える」といった言い方をしない
やらないこと
- 環境への配慮を、土地を売るための飾りとして使うこと
- 「自然と暮らす」といった言葉で、確認すべきことを見えなくすること
このページに書いた内容について、間違いや不足のご指摘は歓迎します。 info@sawabank.jp までお知らせください。
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